月組「娘役王国」 男だって宝塚! はじめに  トップページ

1980年代後半〜1990年代初めは各組ごとに個性があり、
それぞれのカラーが色濃く残っていました。
個人的にいちばん好きだったのは、剣幸(つるぎみゆき)率いる月組。
最初に観たということもあるのですが、
観劇当初は取っつきやすかった娘役が強力で、豊富だったことも大きな魅力でした。

ファンを卒業した後も、チケットを快く取ってくれる友人の好意でたまに観劇に出掛けましたが、
このときの月組に匹敵する「娘役王国」はもう現れそうにもないですね。

娘役トップのこだま愛は、歌、演技、ダンスのどれを取っても、下級生やほかの組の娘役を圧倒する実力。
それに続く朝凪鈴、羽根知里、紫ともという華を供えた「3人娘」もしっかり要所を押さえ、
男役に匹敵する存在感を示していたのはさすがです。

いまだこだま愛を超える娘役はなかなか出ていないようですし(3拍子がずば抜けた実力面で)、
フィナーレで男役3番手以下を押しのけ、娘役スターが順番に階段を下りたショーも観たことがありません。
さらに当時はこだまだけでなく、ほかの組の娘役トップも極めて強力な存在。
星組にこだまに匹敵する大トップの南風まい、雪組には下級生ながらオーラ全開の神奈美帆という逸材がそろっていました。

南風や神奈もこだま同様、男役2番手に匹敵する存在感をみせていましたが、
トップ交代後は各組合同のショー(TMP音楽祭など)で娘役トップが男役3番手と組むシーンが目立ってきます。
この時期を境に、娘役が目立つと男役トップの影が薄くなるという懸念からか、
実力よりも「可憐な雰囲気」(それはそれでトップに必要な要素ですが)が重視され、
日を追うごとに娘役の力不足、「地位低下」(?)が加速したのではないでしょうか。

結果的には、娘役が少々目立ってもそれを包み込めるくらいの大きさが男役トップにないと、
スターも小粒になり、芝居もショーも「学芸会」化するんじゃないかなと思いますが、どうなんでしょうね。

■新進娘役、麻乃佳世の「抜擢」

話は飛びますが、こだまの退団でこのせっかくの娘役王国も崩壊してしまいます。
歌劇団は次期トップ娘役に「3人娘」よりも下級生だった麻乃佳世を選びました。
ただこれは、ほかのサイトなどで書かれているように、すぐに決まったのでもなく、
「突然の抜擢」かどうかも微妙です。

当時は不意打ちのような麻乃のトップ就任で、ファンの間には冷ややかな空気も流れましたが、
時系列的に観ると、麻乃の抜擢は、朝凪退団の結果と思います。

当時は公式に「次期娘役トップは●●」という発表はなかったのですが
(次の公演の配役などでファンは娘役トップに誰が選ばれたかを推し量っていました)、
このときは、特にいつまで経っても情報がはっきりしない。
スポンサーであるVISAか何かの次期公演ご招待の広告で「麻乃佳世」の名前が載り、
ようやく真相が明らかになったという感じだったでしょうか。
次期公演は剣幸の後を継いだ、涼風真世のお披露目公演「ベルサイユのばら―オスカル編」。
ただ実際の娘役トップは「曖昧」な状況で、麻乃はあくまでも「涼風の相手」という位置付けでした。

ベルばらでは、次期娘役トップ候補として最有力だった朝凪の序列が、
決して麻乃の下にならないよう配慮されています。
エトワールの抜擢(結果はどうであれ)、ショーで朝凪と麻乃が重ならない演出、
フィナーレ銀橋での並び順(涼風、天海祐希、朝凪、麻乃の順)をみると、
歌劇団と、結婚を考える朝凪の間でいろいろ話し合いなどが難航していたのではないでしょうか(朝凪はこの公演で退団)。
※この「序列」も宝塚ファンの醍醐味です。微妙な変化でスターの位置付けが分かる仕組みです。

麻乃は美少女系で、下級生ながら華がある存在でした。
しかしここでもし朝凪が短期的でもトップを務めていたら、
しばらくは大トップのこだまが抜けたとしても、朝凪、羽根、紫、朝吹南、麻乃というわかりやすくて
厚い層の娘役スターひしめく月組を堪能できたのではと残念に思います。
その後、紫はトップとして雪組に移籍、
一挙に娘役の層が薄くなり、月組の魅力が大きく損なわれました。

透明な個性で新たな娘役像を築いた麻乃の実力は学芸会レベル、というか「少女歌劇」。
少し後のトップ就任の方が見応えもあったのではないでしょうか。
麻乃はトップ就任後しばらくして、「PUCK」のヒロイン(これは麻乃しかできなかったのでは)などで大好演しています。

なお、当時の月組は、男役も剣を筆頭に、抜群の歌唱力を持つ2番手の涼風真世、
個性的な役柄で光彩を放った久世星佳、キレのあるダンスと上品な顔立ちが人気だった若央りさ、超大型新人の天海祐希と多士済々。
トップの剣は下級生のスターと比べてひとまわり体格が小さかったにもかかわらず、
舞台ではとても大きく見えたのが印象的で、「あーこれがトップたる所以なんだ」と納得しました。
男役トップより一歩下がって、という娘役トップが多い中、
どちらかといえば押し出しが強く、目立ちがちだったこだまを包み込んでいた感じがあったのも、剣の大きさでしょうか。


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