南禅寺界隈の近代建築  琵琶湖疏水の近代化遺産

MAP 南禅寺界隈の庭園 京都の近代建築




東山を借景にした広大な庭園を持つ邸宅がゆったりと並ぶ、京都でも有数の高級住宅街であるこの界隈。

いまでは閑静な住宅地の代名詞的存在になっていますが、京都近代化の遺産が数多く残された場所でもあります。

南禅寺境内の煉瓦建築・水路閣はいまや人気の観光スポットになりましたが、

周辺には他にも疎水に関連した近代建築が多く点在。電気、水道、電車、そして新たな日本庭園――。

日本の近代化を地方自治体レベルで真っ先に推進した京都の先進性をいちばん感じることができるエリアだと思います。



2025年5月、水路閣やインクラインなど琵琶湖疏水関連の5施設が、
重要文化財を通り越して、いきなりの国宝に指定されました!
近代産業の土木遺産では初の国宝! 重要文化財を通り越しての国宝指定は2例しかなかったそうです。
20代の若さでこれら施設の工事を主導した田邉朔郎に心からの敬意を表して――。

これは自分にとってまさに喜びと驚きのニュースでした。
高校時代によく通っていた水路閣の水路沿い、インクラインがまさかの国宝に――。
当時、水路閣の上を流れる水路沿いは今ほど整備されていなかったので、
少しスリリングでもありましたが、観光客もほとんどいなかった時代、
高校生ならではの青春のちょっとした想い出の数々が今もよみがえってきます。

ただ国宝指定はすごくうれしいのですが、これを機に水路閣やインクラインで
気軽に散歩できなくなるのかな、と思うと少し寂しい気分もします。

文化財の保護が最重要、最優先課題ですが、あくまでも日常の中の施設として、
従来通り市民が自由に行き来ができるスペースであってほしいです。





水路閣 

設計:田辺朔郎 竣工:明治21年 南禅寺境内

いまや南禅寺にはなくてはならない存在となった水路閣。
相国寺
同志社のように和風と洋風が絶妙にマッチする風景は
京都ならでは見所ですね。
上を通って蹴上まで歩くコースは木々に覆われて
おすすめの散歩道です。 



旧御所水道ポンプ室 第三トンネル 合流トンネル 

設計:片山東熊  竣工:明治45年 日向大神宮参道横

水路閣から蹴上に向かって歩くと疎水が見えてきます。
その疎水に沿って山科方面に少し歩いたところに
何やら宮殿風の瀟洒な建物が。
これが単なるポンプ室とはなんとぜいたくな・・・・。
東京の赤坂離宮(迎賓館)を設計した片山東熊の作品と知って、
「やっぱり」と妙に納得しました。
敷地内立入禁止なので、 よく見えないのが残念。



ねじりまんぽ/蹴上第2期発電所

竣工:明治初期 三条通蹴上 / 竣工:明治45年  三条通蹴上
 

三条通から南禅寺に抜ける小径(上はインクライン)にあるトンネル 。
トンネルの上に刻まれた文字は
京都府知事を務めた北垣国道筆の「雄観奇想」。
琵琶湖疎水の施設にはそれぞれ、伊藤博文や山県有朋など、
明治の元勲による揮毫が篆刻されているのがなかなかすごい・・・。
北垣国道は田辺朔郎の疎水計画に賛同し、
疎水を完成させた知事として有名です。


 



蹴上浄水場 竣工:明治45年  三条通蹴上

明治45年に完成した、日本最初の急速ろ過式浄水場。
京都では「つつじ」の名所としても有名で、
5月の一時期に一般公開されます。
明治時代、浄水場の建築物として、
西洋風の煉瓦建築を思い付いた先人の発想には脱帽




何有荘  設計:武田五一 南禅寺福地町


とてつもなく広い別荘が点在するこの界隈でも
ひときわ広大な敷地を占める何有荘(かいうそう)。
敷地内にはこの洋館と庭園だけでなく、
なーんとトンネルまであるから驚き。
テューダー様式の洋館は白壁と木の風合いが
見事にマッチしていい味わいです。
ただ、この何有荘、まだ整備されていない場所も多く、
庭の手入れの真っ最中。
それを考えると、
入場料1,000円はちょっと高いかも(2004年夏時点)。

※京都工芸繊維大学に移築されました。



無鄰菴 竣工:明治31年  

この無鄰菴での山県有朋と七代目小川治兵衛の出会いが、
近代の日本庭園を発展させることになりました。

洋館は煉瓦造りの2階建て。明治31年に完成しました。
部屋には江戸初期の狩野派による花鳥図が描かれています
(フラッシュ撮影禁止)。

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