阪神間モダニズム ―戦前に開花した大阪・神戸の都市文化― トップページ 小林一三翁 小林一三翁 (小林一三記念館から)「阪神間」は、大阪〜神戸に拡がる市街地エリア (造形礼賛では神戸市と大阪市の一部建築も対象に含めます)。 戦前まで日本一の大商業都市だった大阪の富豪が 阪急神戸線、宝塚・今津線沿線などに競って邸宅を構え、 その影響で豊かな文化=阪神間モダニズムが開花しました。 宝塚歌劇(宝塚市)や甲子園球場(西宮市)が大阪や神戸ではなく、 いわゆる「阪神間」にあるのもその名残です。 いまやメディアの東京偏重が強まり、 日本で最初に都市文化が開花した「阪神間モダニズム」はほとんど話題になりませんが、 今でも阪神間モダニズムの影響は大阪や神戸、阪神間に色濃く残っています。 華やかな郊外文化を先導した阪急電車の沿線地域には、 関西学院や神戸女学院などの教育機関や実業家の別荘、酒造会社がつくった美術館などがあり、 大阪都心にも阪神間モダニズムの貴重な足跡を伝える商業建築物が往時の姿を伝えています (象徴的な建物だった阪急百貨店本店や 大丸心斎橋店が改築されたのは残念ですが)。 ![]() 阪神間モダニズムの立役者で、阪急電鉄創始者である小林一三翁の旧邸「雅俗山荘」(小林一三記念館)。 阪神間有数の高級住宅地である芦屋や西宮ではなく、 阪急電鉄が最初に事業の拠点を置いた大阪府池田市にあります。 日本で最初とされる郊外住宅の分譲事業もここ池田市で始まりました。 ![]() 阪急百貨店・阪急梅田駅 MAP 世界初のターミナルデパートとして誕生した阪急百貨店も、 かつては阪神間モダニズムを象徴する華麗で上品な装飾に彩られた名建築でしたが、 いまや普通の単なる「豪華なターミナル」に。阪急がこの建築、空間を残さなかったことは寂しいですね。 ![]() 関西学院 MAP ![]() 神戸女学院 MAP 阪神間の開発とともに、関西学院、神戸女学院がともに神戸市から西宮市に移転しました。 両校とも、キャンパスと校舎の設計を手がけたのはW.M.ヴォーリズ。 昭和初期に早くも郊外に大学が移転し、日本では珍しかった洋風の建築物が建ち並ぶ風景は 阪神間モダニズムの象徴的な存在だったのではないでしょうか。 ![]() 関西学院大学の日本庭園 MAP ![]() 旧関西学院教会(現・神戸文学館) MAP ![]() 大丸心斎橋店 MAP 大阪には「阪神間」の客層に照準を合わせた 阪急百貨店、大丸百貨店心斎橋店など、 東京などその他地域にはみられない豪華で高級な百貨店が建設されました。 大丸も阪急と同じく、大幅な改装によって当初の姿から近代的な高層建築物に生まれ変わりました。 ヴォーリズ建築の「粋」だった1階は保存されたそうですが、さてどのようになったのか。 ほかに大阪で個人や財閥の寄付により、 大阪市中央公会堂や府立図書館など豪華な公共建築が開設されたのも、 阪神間モダニズムの地盤と共通するものがあるようです。 ![]() 大阪府立中之島図書館 MAP 大阪の近代建築 ![]() 大阪市中央公会堂 MAP 大阪の近代建築 ![]() 芝川ビル MAP 公式サイト 大阪の中心街、船場に建つ芝川ビル(竣工は昭和2年)。 インカ文明の装飾を基調にしたこのビルも商都大阪の阪神間モダニズムを象徴する瀟洒な建物です。 芝川ビルを建てた芝川家は、関西学院とも深い関わりがあり、 関西学院の移転先である西宮市上ヶ原の大地主でもありました。 芝川家が果樹園「甲東園」を開設したことが甲東園の地名の由来になったそうです(関西学院の公式サイト参照)。 芝川家が甲東園に所有していた別荘は現在、「博物館明治村」に移築されています。 ![]() ヨドコウ迎賓館(旧山邑邸) MAP ![]() 宝塚ホテル MAP (旧館は現存せず。新たな場所で営業継続) ![]() 西宮市大谷記念美術館 公式サイト ![]() 白鶴美術館 公式サイト ![]() 白鷹禄水苑 公式サイト ![]() カトリック夙川教会 MAP 阪神間に西宮市大谷美術館、酒造の白鷹が運営する「白鷹禄水苑」、 白鶴の「白鶴美術館」などの文化施設、旧乾邸など実業家の豪邸などが多く存在します。 特に目立つのは酒造会社が運営する文化施設。 他地方の出身者が「なぜ酒造会社が美術館などの文化活動?」という疑問を投げ掛けていましたが、 (阪神間や京都では当たり前の)酒造会社と文化のつながりは意外に知られていないのかな。 ちなみに日本屈指の進学校である神戸市の灘中学・高校、西宮市の甲陽学院も酒造会社の設立です。 ![]() 神戸旧居留地 MAP 大阪市から阪神間を経由して神戸市まで連綿と続く文化の集積。 他の地方都市はもちろん、東京〜横浜間でもここまで重厚で華麗な近代の都市文化は開花しませんでした。 にもかかわらず、あまりテレビなどでも大きく採り上げられることがないのは関西地盤沈下の影響かもしれませんが、 東京のマスメディア関係者が本来の良質な文化に目を向けていないことにも原因があるのかなと思ったり (地元でも話題になっていないのに、東京や横浜の無個性な商業施設ばかりをステマのように大きく報道する姿勢を観ているとそのような穿った見方もしてしまいます)。 ![]() ![]() 阪急電車も阪神間独自の雰囲気を語る上で欠かせません。 創業以来の車体色(マルーンカラー)を守り抜き、いつもピカピカの車体、 そして車内の上品な雰囲気(広告規制もあり)は、阪神間のイメージに大きく影響しています。 ※あくまでも個人的な印象ですが、日本庭園に関しては、京都と比べると見応えが足りない感じです。 阪神間モダニズムはやはり建築の分野と西宮七園や芦屋、神戸市東部に拡がる住宅街の雰囲気で本領発揮、でしょうか。 大阪市内の主要駅 神戸旧居留地 / 大学の近代建築 百貨店の近代建築 ヴォーリズの阪神間モダニズム Copyright © Goto N. All Rights Reserved. Special thanks to N.Y and N.I. |