
下鴨神社(賀茂御祖神社)の参道入り口、出町柳駅から徒歩数分の場所にある秀穂舎(しゅうすいしゃ)。
社家(神社に代々仕える世襲の家)だった浅田家の邸宅を利用し、
現在は下鴨神社に関する資料などを展示する場所として公開されています。
玄関前に置かれた石像「石人文官」は学問の象徴で、李氏朝鮮から送られたそうです
(ガイドの方がそれぞれの由来などをとても丁寧に説明してくださいます)。


玄関は社家に独特な「華表門」と呼ばれ、鳥居を模した造りになっているとか。
蟇股(かえるまた=荷重受けの構造材)には下鴨神社にちなんだ「鴨」と「双葉葵」(下鴨神社の紋章)の装飾。

内部は撮影禁止ですが、茶室の外につくられた露地は撮影可能です。
一見すると、自然石の石燈籠が美しい普通の坪庭なのですが、下鴨神社の社家らしい特徴も。

その特徴を表すのは、茶室から泉川に向かって架けられた反り橋

この庭(主庭)は茶室と泉川の間につくられているのですが、
泉川に面して神官が身を浄める「禊場(みそぎば)」があります。
この間をつなぐ反り橋は、俗界(橋の手前)と聖域(川の禊場側)を区分する意味合いを持つそうです。


茶室側から見た坪庭。自然石の石燈籠が見事で、大きな存在感を示しています。

ただ反り橋の存在と同じく、この石燈籠と植栽も大きな意味合いを持ちます。
この露地は茶室の付随施設であるとともに、
茶室から神聖な禊場が直接見えないよう「聖と俗」を分ける役割も備えているとか。

茶室の障子は閉められたままだったのですが、できれば茶室から窓越しにこちらの露地を観たかったですね。


泉川に面した禊場。泉川は今も清らかに流れています。

受付入り口に置かれた手水鉢。こちらにも双葉葵の紋様が彫られています。
大炊殿(おおいどの) 

神饌(神様への供物)を調理する大炊殿(おおいどの)へは、御手洗川の横にある入り口から


自然との調和を第一に考えられた、木賊(とくさ)と苔が美しい庭が広がります。

「御薬酒、若水神事」の場となる「水こしらへ場」。
「御薬酒、若水神事」は、大炊殿でつくった御薬酒、境内の井戸からくみ上げた水(若水)を神前に供える儀式で、
毎年12月12日に行われます。この水は京都の料亭などで使用されるとか。
下鴨神社で多く行われる祭事は、1200年の歴史の中で必要とされ、これまで受け継がれてきたんでしょうね。
あらためて下鴨神社の伝統と、皇室や公家だけでなく、京都の町衆との深い関わりを感じます。
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