大仙院
方丈南庭 玄関
 ―大仙院訪問記―





国宝「方丈」の南側に拡がる白砂の庭「大海」。
大仙院の書院周囲の庭園は、蓬莱山から流れ出た急流が花頭窓の下を通り、
宝船が浮かぶような穏やかな流れになった後、この方丈南庭の大海に到達するという構成になっています。










方丈南庭は西側に沙羅双樹、中央より東側に一対の盛砂を置くきわめてシンプルな構成








盛り砂が作られ、沙羅双樹が植えられただけの簡素な庭は方丈南庭にふさわしい清浄な雰囲気







方丈南庭の東側には玄関に通じる花頭窓









玄関は日本でいちばん古い遺構で、国宝








花頭窓、欄間の透かし彫りが禅宗の名刹に相応しい気品を漂わせています。


   透かし彫りの緻密な装飾には瞠目!









室町期に建立された方丈は東福寺の龍吟庵とともに日本最古の方丈建築として国宝に指定されています。
大仙院の住持であった古岳宗亘が自らの隠居所として建立したそうです。






棚が特徴的な方丈書院の間。
方丈は6つの部屋に分かれていますが、すべての部屋の襖を取り払うことが可能な合理的な造りは、
当時としては画期的。
貴族が生活した寝殿とは異なり、華美と過剰な装飾を排したこれら方丈は、後の住宅建築にも大きな影響を与えた、と言われてます。
襖を取り外した内部から観る書院庭園をある書籍で拝見しましたが、
本当に美しく、立体の山水画でした(拝観時は襖が入っているため鑑賞不可能)










参拝者にとって入り口となる「一の門」とそれに延段(庭に石を敷き詰めて作った通路)。
延段は簡素な美しさ。門に近づくにつれ、「行」から「草」へ










大徳寺派の寺院に共通することなのですが、境内のちょっとした造形も洗練されています。





【大仙院訪問記】

最初に訪れた時期は2000年前後だったでしょうか。
今ほど庭に興味がない時だったのですが、わずか30坪ほどの区画に作られた書院庭園を観たとき、
こんな狭い場所に作られた造形が独自の世界観をつくり出し、無限の広さを感じさせることに感動しました。
素人が観てもわかる名石(形、風合い、色合い)が置かれ、まさに中国の山水画の世界が目の前に。
それ以来、本格的に日本庭園に惹かれ、いくつもの名園も鑑賞するようになりましたが、
枯山水ではやはり大仙院の書院庭園を上回る緻密さ、世界観を超える庭には遭遇していない気がします
(露地の美しさでは、大仙院に隣接する真珠庵・庭玉軒の庭も双璧ですが)。



日本史の教科書でも、枯山水の代表としてここ大仙院と龍安寺の石庭がよく紹介されていますが、
個人的には「無の世界から精神的な思索へ導く」龍安寺よりも、
「写実的な造形の一つ一つ、そしてその全体像が精神的な感動を与えてくれる」大仙院の庭の方が好きですね。
書院庭園の手前に置かれた椅子に座って、亭橋の花頭窓越しに蓬莱山を眺めたり、間近で名石が作る世界観に浸っていたり――。
時間が許す限り、ここでこの庭を鑑賞していたい気持ちになります
(大仙院は修学旅行生にも人気の寺院なので、集団で学生が押し寄せると瞬間的には大混雑しますが、
時間に縛られて行動する彼らが立ち去るとまた静寂の世界に。清水寺や金閣寺ほど観光客が押し寄せることはありません)。



長らく大仙院は写真撮影が禁止されていましたが、2024年秋に再び撮影が認められるようになりました。
最初に訪れた頃に撮れなかった光景などに後悔が残っていたので、撮影解禁は本当にうれしかったです。
外国人観光客が写生をしたり、気軽に写真を撮ったりというとても自由な雰囲気も大仙院の魅力でした。
再びそのような空気感が大仙院に戻ることを期待しています。

※造形礼賛では、2000年前後に撮影可能だった場所の写真も掲載しています。2025年時点でも同じ場所が撮影可能とは限らないので、事前に確認してください。


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