西本願寺飛雲閣と滴翠園
 地図 桃山文化の庭 西本願寺の庭園と近代建築





鹿苑寺金閣、慈照寺銀閣とともに「京都三閣」の一つとされ、ほとんど公開されることがない西本願寺の飛雲閣。
2024年「京の冬の旅」では撮影もOKとのことだったので、さっそく訪れました。
周囲の庭園「滴翠園(てきすいえん)」の池泉「滄浪池(そうろうち)」に浮かぶ飛雲閣はまさに芸術的な美しさでした
(上の写真は、苑内の小高い丘に建つ四阿
あずまや「胡蝶亭」から眺めた飛雲閣)。








受付の門を入ってすぐ目の前に広がる飛雲閣。左右非対称でも絶妙な調和性を保ち、
白の障子が目立つことから「飛雲閣」と呼ばれるようになったそうです。
飛び立つような屋根の重ね方も、雲が翔ぶが如くの美しさ(建物の詳細な構造は公式サイトを参照してください)。





どの角度から見ても見飽きないアシンメトリーの美しさ。
この華麗な飛雲閣は豊臣秀吉の聚楽第の一部を江戸時代初期(1632年)に西本願寺に移築したと伝えられています。
向かって左側(東側)の紅壁の建物は、後に付設された茶室の「憶昔(いくじゃく)」です。





憶昔には入ることができないので、遠くから眺めるだけですが、
露地門から茶室に至るまでは腰掛待合も設えられ、露地らしい造りになっています。








飛雲閣の右側(西側)に広がる滄浪池の奥には浴室の黄鶴台(おうかくだい)」があります。
黄鶴台は飛雲閣とは別に単独で重要文化財に指定されています。
後ろの建物は西本願寺と同じく浄土真宗の別宗派、真宗興正寺派の本山「興正寺」。
ある観光客がガイドの方に「あちらが東本願寺ですか?」と尋ねていましたが、いやそれ違います笑









飛雲閣正面の前に架けられた石橋「龍背橋」。
滄浪池が作られた当初には存在せず、江戸中期に架橋されたそうです(それ以前、飛雲閣への出入りは舟で)。

※この写真まではiPhoneでの撮影。デジカメでは強烈な日光のためゴーストだらけに。
iPhoneはその点ゴーストが少なくて良かったのですが(感謝!)、妙に鮮烈な「青色」が強調され、デジカメに比べるとやはり少し薄っぺらい感じになりますね。



   茶室「憶昔」と露地    






茶室「憶昔」。庇から滄浪池まで伸びる捨柱が、か細いながらも大きな存在感


   滄浪池    






滄浪池の西側部分。黄鶴台の廻廊の下には舟がつながれていますね。


   茶室「澆花亭    









滄浪池の西側に広がる枯山水の庭園と茶室「澆花亭(ぎょうかてい)」。
本来は枯山水ではなく、この水の流れが滄浪池に注ぎ込んでいたと係員が仰っていた気もします(少し記憶が曖昧)。





【拝観後記】

念願叶ってようやく拝観することができた飛雲閣ですが、拝観後に思ったことを少々。
建物そのものは本当に見事で、これだけでも京都に来る価値があると思えるほどなのですが、
その反面、少し矛盾しますが、全体としての感動は当初の期待をやや下回っていたかもしれません。
訪れたのは3月初旬、晴天ながらも粉雪が舞うという天気のせいか、
最上部(第三層の「摘星楼」)には蔀が下ろされ、独特の景観を際立たせる円障子を観ることができませんでした。
やはり摘星楼の円障子が隠された状態では、文字通り「画竜点睛を欠く」という印象でしょうか。

それよりも今回改めて痛感したのは、中心となる建物、庭へのアプローチの重要性。
飛雲閣(滴翠園)は、塀のすぐ外に設置された受付を入ってすぐ目の前に現れます。
もちろんすぐに飛雲閣が視界に飛び込んできたときは感動するのですが、あまりに唐突すぎるというか、
直接的すぎる感じも受けました。
例えば銀閣寺金閣寺も、「主役」の建物、庭園が登場するまでにはいろいろな「舞台装置」が設けられ、
わくわくした気持ちが高まったところに銀閣、金閣が登場します。
このような工夫がないため(それは誰の責任でもないのですが)、感動が薄かったのかなと思ったりします。
もし庭園西側(枯山水側)から入場して趣のある茶室(澆花亭)などを眺めながら、
少し歩いた後で「飛雲閣との遭遇」になっていればまた違った印象だったのかな。

これまであまりアプローチの重要性を感じたことはなかったのですが、
とても入念にアプローチが考え尽くされた桂離宮は別格としても、
ある程度の規模の池泉庭園で感動した場所は、どこもこのアプローチが優れていたことを再認識しました。
個人的に大名庭園にあまり大きな感銘を受けないのも、「入り口からすぐ目の前に池泉庭園」というパターンが多いからかもしれません。

    
         
       
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