瓢亭本館の庭  English version  瓢亭訪問記





【所在地】 京都市左京区 【地域】 南禅寺界隈 【庭の形態】 料亭の庭坪庭・露地池泉庭園 【面積】 中規模
【創業】 天保8年(1837年)、茶屋としては約400年前 【公開形態】 利用者のみ見学、撮影可能 【訪問日】 2023年7月







無鄰菴のすぐ近くにある京都を代表する高級料亭、瓢亭
「市中の山居」を体現したとされる露地風の庭と、夏にのみ提供される本館での朝粥を味わうため、
ようやく2023年の夏に訪問することができました。


瓢亭の創業は約400年前。南禅寺参道の茶屋として営業を開始したことから、
今も本館の玄関は茶屋風の素朴な造りになっています
(草鞋が飾られ、休息用の床几が置かれているのはそのときの名残だそうです)。
料亭としては、江戸時代の天保8年(1837年)から180年以上の歴史を誇っています。
瓢亭の定紋である「瓢(ひさご)」の意匠は伝統を感じさせるだけでなく、愛らしくもあり。






予約時間が来ると木戸をくぐり、いよいよ「市中の山居」へ。









木戸のすぐ横には外腰掛。この一画に踏み入れた途端、木戸の表側の街並みから隔絶された別世界に









木の根元を覆い尽くす色も質感も最高の苔。その横に自然に生える趣の羊歯など、実際は手入れされているのに、
人の手が入っているのを全く感じさせない極めて自然な造形










自然石を集めた「草」の形式の延段を通り、料理を頂く部屋に向かいます。
延段はあくまでも「自然らしさ」を大切にした庭にふさわしい美しさ










案内された部屋は、明治期に建てられた四畳半の茶室「探泉亭」。
袋棚は花頭窓風にくり抜かれ、簡素な造りでありながらとても個性的で、静かな華やかさを醸し出します。
食事をする立礼棚には瓢亭の商紋「瓢箪」の意匠が施されています。










窓の外は(一見すると)雑木林に覆われたようなまさに市中の山居






その自然の造形を窓枠を通して観ると、名画のようになるところがさすがですね。
窓の外の木はカクレミノ。人間の審美眼を意識したような枝ぶりが見事です。







カクレミノの根元付近にさりげなく置かれた石燈籠。
自然の中に敢えて人工の造形を置くことで、庭は「ありのままの自然」から「文化」に昇華されます。











池を挟んで探泉亭の対岸に建つのは、瓢亭創業時からの歴史を持つ茅葺きの茶室「くずや」。
池の周囲は無造作に木々が生い茂っている印象を受けますが(実際には敢えて無造作に演出されている感じです)、
瓢亭は敢えて本来の茶の精神を尊重し、自然な「雑木」を庭に取り込んでいるそうです。







京都の街中で、お店の木戸を入った途端、このように本来あるべき姿の自然を体験できるのは貴重。
庭では市内でめったにお目にかかれない美しい蝶も舞い、まさにここだけは「市中の山居」でした。










「くずや」に向かう延段。瓢亭では予約時に部屋を選ぶことはできないのですが、
いつか「くずや」で料理を頂きたいですね。明治の元勲や川端康成などの文豪もこの「くずや」をとても愛したとか。







入り口から探泉亭までの通路に建つ門も自然な趣を強調した造りに









苔むした石燈籠と蹲踞(つくばい)。人工的な装置が自然に溶け込んで一体化しています。
この庭を手がけたのは、京都では有名な造園業者「植熊」三代目の加藤熊吉。
建仁寺の方丈前庭「大雄苑」も手がけています。



 瓢亭訪問記 





       
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